丸尾末広はロックバンドのレコードジャケットやCDジャケットも多数てがけている。このページでは丸尾末広の音楽関連の仕事を記録する。
ザ・スターリン「虫」
日本のロック史に残る偉大なジャケット画
『虫』は1983年4月25日にリリースされた日本のハードコアパンクバンド「ザ・スターリン」のサード・アルバム。LPジャケットの表面は丸尾末広のイラストが採用されている。中心の人物は1960年の上映映画『危うし!快傑黒頭巾』のポスターから引用したもので、額部分に星マークが付け加えられている。背景は何か戦争写真のようですがちょっとわかりません。
AUTO-MOD「REQUIEM(滅びゆく時代へのレクイエム)」
日本のパンクムーブメントの先駆けAUTO-MODのファーストアルバムのレコードジャケット画
「REQUIEM(滅びゆく時代へのレクイエム)」は、1983年8月にリリースされたロックバンドAUTO-MODのファーストアルバムのジャケット用に丸尾末広が描き下ろした作品。AUTO-MODは、ゴス系イベント「TOKYO DARK CASTLE」のオーガナイザーであるGENET(ジュネ)が1980年に結成し、現在も活動しているゴシック・ロックバンド。1980年代から始まる日本のパンクムーブメントの先駆け的な存在のバンドでもある。
極楽蝶「Flower Revolution」
丸尾にギャラ未払い状態で行方をくらませた80年代インディーズバンド
「Flower Revolution」は1986年に発売されたロックバンド極楽蝶のアナログレコードジャケット用に描き下ろされた作品。映画『眠狂四郎多情剣』で眠狂四郎演じる市川雷蔵のポスターを引用している。
極楽蝶は1985年結成の和風アヴァンギャルドバンド。以前はSPERMというバンド名で活動しておりボーカルの井原神次とベース津崎成美を中心に結成された。本アルバムはSperm Factory Recordというレーベルからリリースされている。
収録曲
A1 鬼狂門
A2 Hong Kong Century News
B1 雨~Cool Cool Rain
B2 Genpatsuうさぎ
クレジット
Art Direction [Ad] – Unico (4)
Bass – 津崎成美
Guitar, Keyboards – 門脇美実
Illustration – 丸尾末広
Text By – マツムラ, ランコ, たぐちともろを
Vocals – 井原神次
Twitterの丸尾のツイートによればギャランティが未払い状態のまま行方をくらましたという。
卍リョウ卍さん。
— 丸尾地獄 (@maruojigoku) 2016年7月10日
「極楽蝶」のアナログレコードよく持っていましたね。
こいつらはギャラを払わずに逃げました。今思い出しても腹がたつ!
これ以降、アマチュアのバンドからの依頼には条件をつけるようにしました。
恐悪狂人団「NO! 有為転変を乗り越えて不壊不動の境地に至れ!」
THE CRAZY SKBの原点といえるバンドのジャケット画
「NO! 有為転変を乗り越えて不壊不動の境地に至れ!」は、1988年7月に太陽レコードから発売された恐悪狂人団の1stアルバムのジャケット用に丸尾末広が描き下ろした作品。恐悪狂人団はTHE CRAZY SKBの原点と言えるバンド。
また、1992年2月25日に殺害塩化ビニールより発売された2ndアルバム「合掌」のジャケット画も丸尾が手がけている。
筋肉少女帯「元祖高木ーブー伝説」
高木ブーを乱歩や寺山風にアレンジした名ジャケット画
「元祖高木ブー伝説」は、1989年12月5日にリリースされたロックバンド筋肉少女帯のメジャー2枚目のシングルCDジャケット用に描き下ろされた作品。
大槻ケンヂ自身が寺山修司や江戸川乱歩に強い影響を受けていることから、おそらく白塗りの顔(寺山修司を暗喩)にされ、また怪人20面相風の黒マントで魔術師風な出で立ちにされているのではないかと思われる。胸にはみどりちゃんらしきキャラのバッヂが付いており、バックには象、虎、花火などが描かれていることから見世物一座・サーカス団であると思われる。白塗りにピエロ的な化粧はどこか殺人ピエロことジョン・ウェイン・ゲイシーを彷彿させる。なお、ジャケット原画では象の背中にメンバーが乗っていたがリリース時にはメンバーは消去されてたようだ。
「元祖高木ブー伝説」は筋肉少女帯のインディーズ時代の1987年7月にナゴムレコードから自主制作盤のレコード「高木ブー伝説」として発売されているが、こちらは上條淳士が描いている。
ジョン・ゾーン「ネイキッド・シティ」
サックス奏者で前衛音楽家ジョン・ゾーンのアルバムジャケット
「tortune garden」は前衛音楽家ジョン・ゾーンが率いるバンド、ネイキッド・シティが1990年にアメリカでリリースしたアルバム「tortune garden」のLP/CDジャケット用に描きおろされた作品。宣伝用ポスターにも使われている。
なお、ゾーンは2005年に出版された丸尾末広のイラストレーション集『丸尾画報EX Ⅰ』(河出書房新社)に序文を寄せている。「(丸尾の)作品は直感的、複雑かつ多層的であり、日本人の精神の深みを、率直で豪胆に、際立った視覚的スタイルによってイラスト化する」。
ネイキッド・シティはサックス奏者で作曲家のジョン・ゾーンが率いるバンド。ニューヨークに基盤にしておもに1988年から1993年にかけて活動していた。ジャズ、サーフ、プログレッシブ・ロック、クラシック、ヘヴィ・メタル、グラインドコア、カントリー、パンクロック、その他さまざまなジャンルの要素を取り入れていた。
以下はCD版。
NIHIL TENTION「かまきり」
宮崎ローカルのロック・バンド
「かまきり」はロックバンド、NIHIL TENTIONが1997年にビクターエンタテインメントからリリースしたアルバムジャケット用に描きおろされた作品。NIHIL TENTION宮崎出身のミクスチャーロックバンド。
デスマーチ艦隊「空にはとどろ。号砲の。」
軍歌を独自にアレンジしてパンク化した伝説のバンドのジャケット画
「空にはとどろ。号砲の。」は、1998年11月21日にリリースされたバンド、デスマーチ艦隊のサードアルバムCDジャケット用に描き下ろされた作品。「荒波越えて」「オクラホマミキサー」「ウィリアムテル序曲」などの軍歌を独自にアレンジしてパンク化し、また衣装は海軍服や鼓笛隊の衣装を見に付けていたため、ジャケット画はそれらが反映された内容となっている。1999年に活動停止。2003年に浅草ジンタとバンド名を変え。昭和初期、和風メロディのハードマーチをベースに現在も活動している。
BALZAC「全能ナル無数ノ眼ハ死ヲ指サス」
ホラー・パンクバンドの代表格BALZACの4thアルバム
「全能ナル無数ノ眼ハ死ヲ指サス」は、2000年12月にリリースされたパンクバンドBALZACの4thアルバムのジャケット用に丸尾末広が描き下ろした作品。BALZACは1992年に京都で結成され、以降大阪を拠点に活動している4人組のバンド。ホラー映画とパンクロックを融合したホラーパンクというスタイル。また、2005年4月にリリースしたミニアルバム「Dark-ism」のジャケット画も丸尾末広が手がけている。
「全能ナル無数ノ眼ハ死ヲ指サス」は「カリガリ博士」のフランシス、「Dark-ism」は1979年版「吸血鬼ノスフェラトゥ」からの引用である。
365:A TRIBUTE TO THE STALIN
ザ・スターリンの曲をさまざまなミュージシャンがカバー
「365:A TRIBUTE TO THE STALIN」は、2001年1月24日にポリドールより発売されたザ・スターリンのオムニバス・トリビュートアルバムのジャケット用に丸尾末広が描き下ろした作品。ザ・スターリンの曲を犬神サーカス団、大槻ケンヂ、パンタなどの様々なミュージシャンがカバーしている。セーラー服を着た巨大な女学生の股を軍隊が攻撃している。背景は富士山がそびえている。
ASSFORT「Free Punk Customize Kit」
ハードコア・パンクバンドの2ndアルバムジャケット画
「Free Punk Customize Kit」は、2001年2月7日にリリースされたハードコア・パンクバンド、ASSFORTの2ndアルバムのジャケット用に丸尾末広が描き下ろした作品。人間とチーターが融合したような獣人が少女をさらっている。
MERRY「個性派ブレンド~黄昏編〜」
ビジュアル系バンドMERRYの限定CDジャケット第1弾
「個性派ブレンド~黄昏編〜」は、2002年9月15日にリリースされたヴィジュアル系ロックバンド、MERRYのシングルCD用に描きおろされた作品。限定3000枚レコードジャケット仕様。
MERRY「個性派ブレンド~純情・情熱編〜」
ビジュアル系バンドMERRYの限定CDジャケット第2弾
「個性派ブレンド~純情・情熱編」は、2002年11月17日にリリースされたヴィジュアル系ロックバンド、MERRYのシングルCD用に描きおろされた作品。限定3000枚レコードジャケット仕様。ドミニク・アングルをはじめ、西洋美術におけるベッドに横たわる裸婦画を基盤にして、独自にコラージュをしていると思われる。
犬神サーカス団「呪恋」
寺山系和ゴスロックバンドの4thミニアルバムのジャケット画
「呪恋」は、2008年4月9日に発売された犬神サーカス団の4thミニアルバムのジャケット用に描き下ろした作品。犬神サーカス団は日本のロックバンド。マンガ雑誌「ガロ」の文通欄を通じてメンバーが集まり1994年結成。一時メジャーデビューしたが、2006年に再びインディーズに活動の場を戻し、2012年に「犬神サアカス團」にバンド名を変更。寺山修司の映画『田園に死す』に登場するサーカス一座がバンド名の由来となっている。丸尾末広原作の舞台「少女椿」の主題歌に新曲「運命のカルマ」を提供している。