S.クレイ・ウイルソン / S.Clay Wilson
アンダーグラウンド・コミックスの帝王
概要
生年月日 | 1941年7月25日 |
国籍 | アメリカ |
表現媒体 | 漫画、イラストレーション、絵画 |
ムーブメント | アンダーグラウンド・コミックス |
代表作 |
・チェッカード・デーモン ・Zap Comix |
公式サイト |
スティーブ・クレイ・ウィルソン(1941年7月25日生まれ)、通称S.クレイ・ウィルソンはアメリカのアンダーグラウンド漫画家。
1970年代のアンダーグラウンド・コミックス運動(Underground Comix)の中心的な人物。下層階級住民の暴力的で性的なパノラマ世界を露骨に描いたことで読者から注目を集めたことで知られる。ウィルソンは初期『Zap Comix』で活躍。
暴力やセックスにまつわる一切のタブーを無視した圧倒的に自由奔放な描写と、それに見事なほど一致した豪快でワイルドなその人柄は、S.クレイ・ウィルソンと初めて出会った若き日のロバート・クラムに強烈な衝撃をあたえ、その後のアーティスト人生を決定づけた。
ロバート・クラムは1968年頃に初めてウィルソン作品を見た際「これまで見たことがない内容だった。どこもかしこも悪夢、バイオレンス、身体の切断、裸体の女性、長く伸びた身体、巨大化、卑猥な性要素、臓物で埋め尽くされており、芸術史上これほどグラフィカルに地球の地獄絵図が描かれたものはなかった」と回顧している。
略歴
幼少期と初期キャリア
ウィルソンはネブラスカ州リンカーンで生まれ、12歳の頃に絵を描き始め、ネブラスカ大学に入学。米軍で看護兵として訓練を受けて後、カンザス州ローレンスに移り、1968年にサンフランシスコに移るまで奇妙な仕事をしていた。
詩の雑誌『Grist』の編集者であるチャールズ・プラメイルによれば、ウィルソンの絵が初めて掲載された出版物は、1966年の『Grist』7号で、その後、同年に発行された『Grist』9号にも掲載されたという。
『Zap Comix』でウィルソンの代表的なキャラクターとなるチェッカード・デーモンが最初に現れたのは『Grist』誌内の広告だとされている。彼の著者近影は翌年の1967年に掲載されている。
アンダーグラウンド・コミックス
カリフォルニアで、ウィルソンはチャールズ・プラメイルからロバート・クラムの『Zap Comix』を紹介され、1967年後半からクラムとコラボレーション活動を始め、『Zap Comix』第2号から参加。この号からウィルソンの最も有名なキャラクターであるチェッカード・デーモンで誌上に登場した。
ウィルソンはほかにもアンダーグラウンド・コミックス新聞企画『イエロードッグ』の初期参加者でもある。ウィルソンの作品は1972年に3冊発行された『ザ・リップ・オフ・レビュー・オブ・ウェスタン・カルチャー』で特集もされた。特に3冊目は編集者ロバート・フォレットによるロングインタビューが目玉だった。
ほかに漫画雑誌『アーケード』や、1980年代から1990年初頭にかけて発行されたクラムのポスト・アンダーグラウンドアンソロジー集『ワイヤード』にも作品が掲載された。ウィルソンのアンダーグラウンド・コミックス作品は、ウィリアム・S・バロウズやテリー・サザーンといったカウンターカルチャーの巨匠とともに賞賛された。(続く)
絵画作品と児童文学の挿絵
2006年にウィルソンは、テンスピード社から作品集『ザ・アート・オブ・S.クレイ・ウィルソン』を出版。この作品集は漫画作品だけでなく、希少な版画や絵画作品も収録された。本の終盤になるとバイオレンス性は少し薄れるものの、画力の衰えはほとんど見られなかった。また、2001年にはバロウズの『赤い夜とワイルドボーイの街』で描いたイラスト集がドイツから出版された。
ほかに、ウィルソンは1994年に児童文学の古典をウィルソンが独自に解釈した、アンデルセンやグリム兄弟作品のイラストレーションを描いた。
脳障害と現在
2008年11月1日、ウィルソンは重度の脳障がいを患う。サンフランシスコの自費出版のイベント「オルタナティブ・プレス・エクスポ」に出席し、その日は一日中飲酒。ウィルソンが友達の家から出たあと、駐車している車の間で意識不明で倒れているウィルソンが通行人によって発見された。外傷性脳障害となり、左目が潰れていたという。当時の状況の記憶がなく、ウィルソンが誰かから暴行を受けたのか、またどこかから転倒したのかは分かっていない。
集中治療を受けた、また加速治療プログラムを受けたものの、後遺症で会話することが不可能な状態になった。書く動作はできるように回復したもの12月末まで入院。
2010年8月10日、ウィルソンは10年間同棲していたロレーヌ・チェンバレンと結婚。2012年春に脳に水が溜まり入院。脳手術を受けて3週間ほどリハビリを行っていたが、今度は脚に凝血塊が発生して3ヶ月間ベッド上で過ごすことになる。
その後、リハビリを行うが体調はあまりよくならず、現在は認知症を患っているという。絵を描くことはもはやできず、言葉も話せない状態だが、質問に答えることは可能だという。会話に積極的に参加することはできないが、こちらが話していることを理解はできているようである。