胎動するデザイナー・ベビー・ビジネス
不妊治療・遺伝子疾患軽減という嘘
IQ至上主義者と関わりのある特許申請
CRISPRによる遺伝子編集技術がノーベル賞を受賞し、カリフォルニア大学バークレー校がCRISPRの特許を巡ってハーバード大学やマサチューセッツ工科大学を争い、また中国ではHIVに対する免疫機能や認知機能が強化された遺伝子編集ベビーが誕生している現在、遺伝子を改変した「デザイナー・ベビー」という闇のビジネスが動きだしているかもしれない。
しかも、驚くべきことに、この闇のビジネスの先頭に立っているのは、利益を追求する大手の製薬会社や、賀建奎博士やデニス・リプリコフ博士のような半インディペンデントな地下科学者ではなく、社会的に信用のある組織に属している科学者やアカデミックな大学なのである。
2020年12月10日、CRISPR研究者のディーター・エグリとコロンビア大学は、「異数性とフレームシフト突然変異を修正するための遺伝子編集」に関する特許を世界知的所有権機関に申請し、2021年4月4日にWIPOが公開した。
エグリが特許を取得したプロセスでは、ダウン症のような異常染色体分離による一般的な影響を遺伝子編集で修正することに焦点を当てているという。
この特許は、一見すると不妊治療や生殖補助医療を対象とし、特許申請書には次のように明記されている。「ヒト胚の疾患原因となる変異を修正することで、胎児や新生児の遺伝性疾患の負担を軽減し、疾患原因となる変異を持つカップルの不妊治療の効率を、胚選択の代わりに向上させることができる」。
しかし、気になるのは、エグリの特許出願における「共同発明者」として、スティーブン・シューが経営する体外受精の胚を遺伝的疾患の影響を受けにくいよう親が選択することを支援するクリニック「Genomic Prediction」(現在は「LifeView」に改称)の共同設立者であるネイサン・トレフの名前があることだ。
スティーブン・シューは、ヒトの遺伝子の多様性に関する見解を持ったことで、昨年ミシガン州立大学を解雇された人物である。彼はヒトの平均IQを向上させることを提唱しるIQ最大値主義者として知られており、現在は北京ゲノミクス研究所の顧問を務めている。
遺伝子編集はダウン症治療以外にもすぐに応用でき、また、頭脳強化論のネイサン・トレフやスティーブン・シューとつながりがあるエグリとコロンビア大学は今後、物議をかもす可能性が高い。
遺伝子治療のパイオニアが関与する特許商標
2021年5月6日、米国特許商標庁が発表した特許の中に、シュークラト・ミタリポフとオレゴン健康科学大学が出願したもので、タイトルは「Human Gene Correction」というものがある。
ミタリポフの特許取得済みのプロセスでは、CRISPRを「霊長類細胞内の目的の遺伝子の変異対立遺伝子を修正する」ために使用する方法が説明されているが、「霊長類細胞は、1細胞の胚やヒト細胞も含まれている。
ミタリポフは、遺伝子治療の分野ではパイオニア的存在であり、3親等以内の赤ちゃんやクローン人間の研究では、物議を醸しながらも成功を収め、生命倫理の限界を押し広げたことで知られている。
現在、科学者は14日以上前のヒト胚を使って実験することが認められており、ミタリポフは、ヒト胚の遺伝子編集方法をめぐって対立していたライバルのエグリを相手に、遺伝子編集特許のゴールドラッシュの先頭に立つことになった。(出典元:biohack.info)