銅鑼湾書店 / Causeway Bay Books
中国本土で置けない本を扱っている独立系書店
概要
銅鑼灣書店は、2015年12月までは香港の銅鑼灣にある建物の二階にあった独立系書店。現在は台湾の台北に移転している。香港時代は、中国本土では手に入らない中国の政治や政治家に関する本が置かれていた。客層はそれらを探している中国本土からの観光客だった。
2015年末、同店の関係者5人が失踪し、国際的な問題に発展した。2015年12月に最後のスタッフである李波が失踪したことで、第1号店は閉店した。2020年4月には台湾・台北に林榮基が第2の書店をオープンした。
香港にあった最初の店舗
香港にあった最初の店舗は、1994年に林榮基によって設立された。香港島の銅鑼湾(コーズウェイベイ)のロックハート・ロード531番地の2階にあり、広さは約300平方フィート(28平方メートル)だった。一般的な文学や歴史の本に加えて、中国で販売が禁止されているセンシティブなテーマの本も販売していた。
観光客として香港に来た中国本土の人々が、わざわざ本屋に足を運んで、自国の政治に関する本を購入した。
2014年、林榮基は1号店を出版社「巨流」に売却したが、現場の経営者としては残った。2014年9月から3人の株主がいた。桂民海(34%)、ソフィー・チェ(34%)、呂波(32%)である。
業界筋によると、巨流は複数の出版子会社を持つ多様な本を出版している出版社であり、香港国際空港の書店を含め、新聞販売店や書店で広く販売されている中国の政治家の本の30~60%は、この系統が関与している可能性があるという。
2015年の失踪事件
2015年には、最初の店舗に関わっていた主要人物が相次いで失踪し、のちに中国政府に拉致されたことが確認された人物もいる。
●呂波(1970年生まれ)
巨流の経営者であり、銅鑼湾書店の株主の一人。2015年10月14日、彼は書店のPCにログインしたあと消息をたっている。未確認情報筋によると、彼は深圳の妻の自宅で拉致されたという。
●桂民海(1966年生まれ)
スウェーデン出身で巨竜の株主の一人。2015年10月17日、タイのパタヤの自宅から正体不明の男に拉致された。桂は作家・編集者として10年間で200冊ほどの本を書いている。彼が消息を絶ったのは11月6日で、妻に身の安全を伝えるために電話をしているが、居場所を明かすことはなかった。
桂民海の家族はスウェーデン大使館に連絡し、スウェーデン警察はインターポールを通じて報告書を提出した。タイ当局によれば、彼が国外に出国した記録はないという。
貝嶺によれば、ある本が彼の失踪の主な原因ではないかという噂があった。呂波もそう考えていた。 その出版物は『習近平とその愛人たち』という電子書籍である。2つのバージョンがあり、第1版は135ページ、第2版は155ページ。それらはは2016年1月末と2月初頭に発行されている。
●林榮基(1955年生まれ)
銅鑼湾創業者である林榮基は2015年10月24日に行方不明になる。彼は習慣的に長時間書店で過ごし、時折そこで寝泊まりすることもあった。林榮基によれば彼は国境を越えて深センに行き、そこで本土警察に拉致され、目隠しをされ、数ヶ月間の尋問を受けたという。
11月5日に妻が警察に行方不明者届を提出し、数時間後に林榮基から家族に電話を受けたという。林榮基は失踪から8ヶ月後に本土から香港に戻り、すぐに警察署に行って失踪届を取り消すように要請した。しかし、それ以外のコメントは一切拒否した。
その3日後、本土から帰国した後、彼は2015年10月24日に深圳の香港・中国国境取締局で本土当局者に拘束されたと主張する記者会見を行った。
彼は何の犯罪を犯したかを知らされないまま、弁護士に相談したり、家族に連絡したりする権利を剥奪され、寧波に連れて行かれ、中央対策本部に24時間監視されていた。
2016年3月以降、彼は韶関に赴任し、図書館で働いていたが、本土からの出国を阻止された。2016年6月、香港に戻る許可が下りたので、書店の顧客情報が入ったハードディスクを回収することができた。彼はこれを機に中国本土の拘留から逃れ、どのようにして拉致されたか詳細を公表した。
また、2016年2月に本土のテレビで行われた自白は台本によるものであり、李波のテレビでの自白も同様に強要されたものであると供述した。
2019年4月、林榮基は台湾に移住した。
●張志平(1983年生まれ)
巨流の経営者であるは、東莞市豊港の妻の家で私服の男たち十数人に連れ去られた。
●李波(1950年生まれ)
イギリス国籍で、巨流の3人の株主のうちの1人であるソフィー・チェの夫。李は定期的に書店の手伝いをしていた。李は本屋で働くようになるまで、共同出版社で働いていた。同僚4人が行方不明になってからは、BBCや様々なメディアに匿名でインタビューに応じていた。
李が最後に目撃されたのは2015年12月30日、柴湾で特定の無名の顧客に本を配達している最中だった。12月30日午後7時15分頃、李が夕食のために帰宅するのを待っていたチェイは、彼が帰宅しなかったために通報した。書店の最後のスタッフである彼が失踪した後、香港の店舗は閉店した。
英国議会へのFCO報告書
英国外務大臣は、2015年下半期の香港に関する半期報告書の中で、次のように述べている。
「香港の書店や出版社に関係する5人の原因不明の失踪は、香港に対する疑問である。特に、英国籍の李波の状況を懸念している。事件の全容は不明だが、情報によると、李は香港特別行政区の法律に基づく正当な手続きを経ることなく、強制的に本土に連れ去られたという。
これは香港に関する英中共同宣言の重大な違反であり、香港住民に香港の法制度の保護を保証する「一国二制度」の原則を損なうものである。我々は、最高レベルで中国政府と接触し、李氏の香港への即時帰国を求めてきた。
我々は、中国政府と香港特別行政区政府に対し、香港特別行政区における法執行は香港特別行政区当局の専らの責任であり、香港住民の基本的な権利と自由は、共同宣言と基本法に基づき、引き続き完全に保護され、すべての人に尊重されること、また香港の人々に安心させることを強く求める」。
香港店舗の閉鎖
スタッフが行方不明になるまで、最初の書店は2軒の倉庫に10万冊以上の在庫本を保管していた。約45,000冊の書籍を保管していた倉庫の1つは、株主であるソフィー・チェの指示により空になった。本屋のアルバイトの一人の話では、チェは夫の李波の帰還が早まることを願い、在庫の処分を命じたという。
中共によって発禁にされた書籍リスト
- 《習近平與他的情人們》
- 《總書記的8段情緣》
- 《絕密:中南海零點計劃》
- 《李克強因病辭職》
- 《十九大總理之戰》
- 《中央軍委清洗血案》
- 《習近平和元老巔峰之戰》
- 《大老虎反習同盟》
- 《彭麻麻暗鬥宋貴妃》[10]
- 《習近平二十年執政夢》
- 《2017習近平崩潰》
- 《巨變將臨》
- 《天津核爆炸》
- 《天津大爆炸內幕》
- 《大崩塌臨界點》
- 《老江氣殺習大大》
- 《軟禁江澤民》
- 《江澤民大勝習近平》
台北店舗の開店
容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例改正の動きが起こり、香港でデモが活発化すると、林榮基は香港では書店は再開できないとして、中国と距離を置く台湾に渡ることを決心する。
クラウドファンディングで資金を募ったところ、600万台湾ドル(約2100万円)が集まり、台湾政府から20年4月上旬に営業許可を得た。
台湾に移住した林榮基は、2020年4月25日に台湾の台北の地下鉄中山駅近くの商業ビルの10階に銅鑼湾書店を開いた。
その数日前の4月20日には、ある企業が林榮基に対し、この書店の中国語名(銅鑼灣書店)の商標権を侵害していると告発したが、林榮基は自分を標的にに台北の別の場所にオープンした偽物の書店だと主張した。翌日の4月21日、書店近くの飲食店で朝食をとっていると突然、覆面の男から赤いペンキをかけられた。その後、容疑者3人が逮捕された。
司法関係者によると、携帯電話のデータは消されていて、その背後関係は明らかになっていない。林さんは、営業再開を阻止しようとする中国当局による妨害活動だと訴えている。
蔡英文総統は台北書店の開店当日に花束と祝辞を送り、立法院議長の游錫堃と民進党幹事長の羅文嘉も同席した。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Causeway_Bay_Books、2020年12月16日アクセス
・https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/05/0519.html、2020年12月16日アクセス
・https://mainichi.jp/articles/20200416/k00/00m/030/025000c、2020年12月16日アクセス