丸尾末広インタビュー4
あらゆるところから引用する
-それで結局デビューしたのは24歳のときでしたよね。
丸尾:そう、サン出版の何ていう雑誌か忘れちゃった。確かポルノ雑誌だったと思うけど、そこで「リボンの騎士」でデビューしたんだよね。その後、久保書店とかに持ち込んで「漫画ドッキリ号」に描いていた。そこで随分書き溜めたから、単行本も出せたんじゃないかなあ。
-「漫画カルメン」とか「漫画ピラニア」とかに描いたのは、その後?
丸尾:そうだね。俺さ、「大快楽」とか「エロジェニカ」とか「劇画アリス」なんかではやっていないんだよ。一歩出遅れたっていうか、あのエロ劇画雑誌ブームからはもう二年くらいたっているときだったから。
-一時期随分いろんな人が描いていましたからね。
丸尾:ひさうちみちおさんや平口広美さんとかね。でも俺が描き始めたころはもうブームも下火になってきてたんだよね(笑)。
-丸尾さんの絵柄というのはどこから生まれてきたんですか?
丸尾:あちこちからいっぱい引っ張ってきてミックスした絵なんだよね。だから絵柄なんてどうにでもできるよ。この絵はだめだからほかの絵柄にしろって言われたら、パタって変えられる(笑)
-でも、一番引っ張ってきたのはやはっぱり高畠華宵でしょ。
丸尾:そうだよね。とりあえずあれに一番近いね。
-最初に華宵を見たのはいつです?
丸尾:いつ頃だったかなあ。でも最初は全然好きじゃなかった。気持ちの悪い絵だなって思った(笑)。でも人物描写として1つのパターンがあるでしょ。だからそのパターンを華宵から持ってきたわけだよね。崩しながら。
-あと、よく夢野久作を引き合いに出されたりしませんか?
丸尾:よく「相当影響されたでしょ」なんていわれるけど、あんまり関係ないんだよね。だから要するにパクリなんだよ。あのさ、どうしてみんなパクリだっていわないのかなあ(笑)「影響うけてますね」とは言うけど「これパクリですよね」って誰も言わないよ(笑)「少女椿」のタイトルはモロにパクリだよね。パクリ以外の何物でもないよ(笑)。
-まあ、いいづらいのもあるんじゃないですか。じゃ、丸尾さんの漫画はいろいろなところからパクっている、いわばパクリの集大成ですね。
丸尾:そう、パクリの集大成!(大爆笑)
-でも画力があるからパクれるじゃないですか。パクろうと思ったって、そう簡単にできませんよ。
丸尾:まあ、真面目にかいてますから。でも絵ってうまくなろうと思ってやらないとうまくならないよね。描いていれば自然にうまくなるって思っている人もいるけど、自然にはうまくはならないよ。どうすればうまく描けるかって自分で研究していかないとダメだよ。
-じゃあ、いろいろと研究しているから、次から次へと興味がわいてきて、一人のひとにものすごく傾倒する、っていうことはあまりないんですか?
丸尾:そうそう。一人の人にのめり込むまえに、今度はまた別の人が気になってくるんだよね。「ああ、こっちもいいな、あっちもいいな」ってやってると、何か全部ほしくなってくる。だからあんなゴチャゴチャになっちゃうのかも。二者択一ができないんだよね。
-ストーリーのほうもいろいろなところからパクリまくりですか?
丸尾:俺の漫画の話は設定自体があまり独創的じゃないしね。「日本人の惑星」だって日本がもし戦争に勝っていたら、って言う設定だけれど、ブレードランナーの原作者のP.K.ディックが同じようなSF書いているんだよね。そういう設定はよくあるし。タイトルはもちろん「猿の惑星」のパクリだしね(笑)。あとさ、ラジオの人生相談きいて「お婆さんとセックスしている」っていう中学生がいて、それを漫画にした(笑)。そういうネタをストックしておくの
-そういうことはまあ皆結構やってますよね(笑)でも、「腐ッタ夜」なんかは江戸川乱歩の「芋虫」でしょ。
丸尾:そうそう、俺の漫画では親子にしちゃったけどね。そんなもんだよ(笑)
-目をなめるシーンがよく出てくるけれど、あれは?
丸尾:あれも何かに載ってたんだよね。でね、何であのシーンを繰り返し出したかっていうとあれも計算なんだよね。同じ事を繰り返し繰り返しやってたら登録商標みたいになると思って(笑)。
-計算してますねえ(笑)
丸尾:それ、デビューしたときから計算したの。なにか1つだけでいいから「あ、また出てる、またやってる」って水戸黄門の印籠みたいなのを作ろうと思ったのね。するとみんな「あれはどういう意味ですか」て考えているらしい。でも意味なんてないんだよ(笑)。それに誰もやってないことを考えたとかそういうことじゃないしね。そんなこと誰だってやってるねよね。