エポック・タイムズ / The Epoch Times
NYタイムズを脅かす法輪功の極右ニュース
概要
「エポック・タイムズ」は、米国に本拠を置く法輪功と密接な関わりのある極右の国際多言語ニュースメディア。日本語版は「大紀元」。テレビ放送「新唐人」(NTD)を運営するエポックメディアグループのニュース部門。エポックタイムズのウェブサイトは35カ国にあるが、中国本土では遮断されている。
エポック・タイムズは、中国共産党に反対し、欧州では極右政治家を宣伝し、米国ではドナルド・トランプ大統領を支持している。
エポック・タイムズは、もともとニューヨークの街角で無料で配られていた反中国的な傾向の、小さな低予算の新聞だった。しかし、2016年と2017年に同紙は2つの変化を遂げ、米国において最も影響力のあるなデジタル出版社の1つへと変貌を遂げた。デイリー・コーラーやブライトバート・ニュースに匹敵するオンライン視聴者を持っている。
エポック・タイムズがこの4年で急成長した背景には2つの大きな要因がある。1つはトランプ大統領を味方につけたことである。米国政治に関する報道はよりトランプを支持するものになり、トランプ反対派を批判する記事が増えた。NBCニュースの2019年のレポートによれば、トランプ陣営に次いで、親トランプ派Facebook広告の第二位の資金提供者であるという。
トランプの元参謀で、ブライトバート・ニュースの元会長であるスティーブン・K・バノンは7月のインタビューで、エポックタイムズの急成長に感銘を受け「彼らは2年後には保守系ニュースサイトのトップになるだろう」と述べた。
エポックタイムズが急成長したもう1つの要因はソーシャルメディアである。フェイスブックである。エポック・タイムズとその関連会社は何十ものフェイスブックのページを作り、購読者を売り込み、党派的なニュース報道へ誘導するという斬新な戦略を採用した。YouTubeでも同じような展開をした。
また、Qアノンの陰謀論や反ワクチンのプロパガンダを広めており、他の法輪功関連団体、例えば芸能団体の「神雲」などを頻繁に宣伝している。
日本では特定の政治政党や活動家の支持は見られず、どちらかといえば日本人よりも在日華人向けのニュース記事を配信している。
歴史
エポック・タイムズは、ジョン・タンと法輪功新宗教運動に所属する他の中国系アメリカ人によって2000年に創刊された。当時、タンはジョージア州の大学院生で、地下で新聞を創刊した。
タンは、創刊理由について中国国内での検閲と、中国政府による法輪功弾圧に対する国際的な理解の欠如を正すためと述べている。
2003年までに、エポック・タイムズのウェブサイトと新聞グループは、中国国外で最大級の中国語ニュースサイトと新聞グループに成長し、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、インドネシア、台湾、香港、西ヨーロッパの主要国にローカル版を展開した。
最初の英語版は2003年にオンライン配信で始まり、2004年にはニューヨークで紙面版の配布も始まった。
保守的なシンクタンクであるフーバー研究所は2018年の報告書で、「米国における真に独立した中国語メディアは、中国で禁止されている宗教宗派である法輪功の信奉者によってサポートされているいくつかのメディアと、ビジョン・タイムズと呼ばれる小さな出版物とウェブサイトぐらいしかなくなっている」とコメントしている。
同様に、国境なき記者団は2019年の報告書で、「中国で迫害されている宗教運動「法輪功」が運営する「エポック・タイムズ」や「新唐人テレビ」、米国に本拠を置く政権批判の有力者が設立したウェブサイト「中国デジタルタイムス」を除けば、米国には現在、真に独立した華僑のメディアはほとんど存在していない」とコメントしている。ほかのほとんどは中国共産党が支援する中国語メディアである。
財務
起源、影響力については公にはほとんど知られていない」とし、エポックメディアグループと新唐人テレビの傘下で、いくつかの地域の免税非営利団体にゆるやかに組織されているという。
同紙の収入は、2016年の380万ドルから2017年には810万ドル(720万ドルの支出あり)、2018年には1240万ドルと、近年急速に増加している。
エポック・メディアグループの税務書類によると、2012年から2016年の間に、同グループは保守派政治献金者のロバート・マーサーが率いるヘッジファンドであるルネッサンス・テクノロジーズの資本元から90万ドルを受け取っていたという。
クリプトカレンシー・ヘッジファンドを運営する元NBC幹部でフェイクニュースサイト「Before It's News」の運営者であるクリス・キッツェは、2017年に同紙の取締役会に副社長として参加している。
ニューヨーク・タイムズの2020年のレポートでは、エポック・タイムズの最近の富に対して 「謎そのもの」と呼んでいる。
NTDとともにドキュメンタリー番組を制作したスティーブ・バノンは、プロジェクト予算に関して「私は彼らにかなり与えた」と述べ、「彼らは振り返って『良い数字だった』と言うだろう」と述べている。
元従業員によれば、エポック・タイムズは、購読料、広告、富裕な法輪功学習者からの寄付金で運営されているという。
配信
エポック・タイムズによると、21カ国語と35カ国語でウェブサイトを運営しており、中国語、英語、スペイン語、ヘブライ語、ベトナム語、日本語、韓国語、インドネシア語の8カ国語で紙版を発行している。
アナリティクス会社のTubularによると、2019年4月、エポック・タイムズや新唐人テレビ(NTD)を含むエポック・メディアグループの動画や広告は、Facebook、YouTube、Twitterで合計30億回の再生回数を記録したという。これは全動画クリエイターの中で11位にランクされるもので、NBCニュースによれば、他の伝統的なニュース会社の中では1位となっている。
エポック・タイムズへの嫌がらせ
エポック・タイムズは、その過激さや承認されていないコンテンツのため、中国共産党の影響力の強いソーシャルメディアや動画サイトなどで排除や制限の対象となっている。
中国の外交官が法輪功関連のコンテンツを報道したメディアに対して脅迫をしたことがある。
2006年、国際ジャーナリスト連盟は、エポック・タイムズ紙に対する「汚い戦争」と呼ばれる事件を批判し、エポック・タイムズ紙の香港の印刷工場が正体不明の男に押し入られて破壊されたことや、シドニーとトロントのエポック・タイムズのオフィスに有毒物質が入っていると疑われる不審な郵便封筒が届いたことなどを挙げている。
IFJはまた、エポック・タイムズのスタッフや広告主が脅迫されたり、新聞が没収されたりする事件もあり、「反対意見の声を潰すことを目的とした悪質な魔女狩り」であると指摘している。
中国共産党の影響力が強いマレーシアでは、エポック・タイムズは中国共産党の圧力を報道した後、一時的に出入り禁止になった。
2016年、オーストラリア国立大学の薬局で、中国人留学生・学者協会の会長が薬剤師と対立し、エポック・タイムズ紙を投げ捨てた後、薬局からエポック・タイムズの新聞が撤去された。
この事件は、中国共産党がスポンサーとなっている海外の学生団体への疑問をめぐり、全国的なメディアに取り上げられた。
2019年11月、国境なき記者団は、エポック・タイムズが4人の覆面放火魔によって印刷機を破壊された報道を受け、香港の最高経営責任者のキャリー・ラム氏に報道の自由を守るよう呼びかけた。
さらに、国境なき記者団は2019年の報告書の中で、エポック・タイムズの最高技術責任者であるLi Yuanは、2006年2月8日にジョージア州アトランタの自宅で「中国共産党と関わりのある人物」に襲われ、2台のノートパソコンを奪われたと述べている。
2020年のアメリカ大統領選挙では、不正選挙に関してドナルド・トランプを擁護する内容のコンテンツを配信したとして、Twitterアカウントが一時凍結されたことがある。
法輪功とのつながり
2005年、サンフランシスコ・クロニクル紙は、「中国の共産党、政府の弾圧、社会不安について挑発的な報道を行う米国を拠点とする中国語メディア3社(The Epoch Times、Sound of Hope、NTDTV)は、法輪功精神運動と関係がある」と報じた。
各報道機関の幹部は、取材に対して、自分たちは法輪功運動全体を代表しているわけではないと主張している。
2006年、AP通信のナハル・トゥージ記者は、「法輪功がエポック・タイムズを所有している」というのは「法律上的には不正確」であると書いている。
ただ、トゥージは「多くの観測者」は、「法輪功がエポック・タイムズを広報活動に利用していると言っており、エポック・タイムズは法輪功とつながりがあり、法輪功に同情的な報道をしていると指摘している。
英『エポック・タイムズ』の会長スティーブン・グレゴリ氏は、2006年に『エポック・タイムズ』が法輪功と直接関係していることを否定している。
2003年、社会学者の趙月枝は「法輪功と組織的な親和性を示す」という論文で、またエポック・タイムズは中国共産党に対して否定的な描写や法輪功の肯定的な描写を強調していると指摘している。
ニック・コドリーやジェームズ・カランは2003年に、「法輪功関連のオルタナティブメディアの進化の大きな一歩」という論文で、亡命中の民主化活動家との事実上のメディア提携の一部である可能性があると書いている。
法輪功の創始者の李洪志は以前、インタビューで「私たちは、お布施を集めたりするようなことも一切やっておりません。要するに、みんなボランティア活動のつもりでやっていますからね、人件費などゼロですし、各地の修練場も地域の公民館や図書館、公園などの公共施設を光熱費など実費だけ払って格安で借りて、本当に自主的に運営していますからね」と話している。
このことから、エポック・タイムズは、法輪功修練者たちが自主的に立ち上げたメディアのため、確かに法輪功の信者が運営しているものの、法律上は法輪功が所有しているというのは正しくないということではないだろうか。
これが、たとえば、幸福の科学が直接運営しているニュースサイト「ファクト」との違いである。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/The_Epoch_Times、2020年12月12日アクセス
・https://www.nytimes.com/2020/10/24/technology/epoch-times-influence-falun-gong.html、2020年12月12日アクセス