War Room:パンデミック
Foxニュースに代わる共和党員と極右のプラットフォーム
概要
『WAR ROOM:パンデミック』はスティーブン・バノンがホストを勤めるネットストリーミング形式の政治番組。
2020年1月25日からほぼ毎日、午前9時(アメリカ東部標準時)にAmerica's Voiceのネットワークを通じて、平日に2回、土曜日に1回、ライブ放送形式で、医療、公衆衛生、経済、国家安全保障、サプライチェーン、地政学などの各分野のトップ専門家たちの独占的な分析や最新情報を配信している。
Apple社のプラットフォームで最も人気のある「ポッドキャスト」番組の1つでもある。
かつて共和党支持者やトランプの熱狂的なファンのプラットフォームメディアといえばFoxニュースだった。
しかし、Foxニュースがトランプ大統領の熱狂的なファンの間で支持を失っているように見える中、代わりにバノンの「War Room」が極右の安全地帯として勢いを増している。
War Roomが一般のメディアと明らかに異なるのは、大手メディアから異端視されがちな人物を積極的にゲスト出演させ、彼らによるインサイダー的な洞察を紹介していることだろう。
この番組で頻繁に共演している元トランプ大統領のホワイトハウス顧問のピーター・ナヴァロは、「伝統的な保守系メディアは、訴訟などに脅かされ、本当に重要なことを語ろうとしなかった。今、視聴者は代替手段を探しているのです。スティーブの番組に出てくる人は、まず、商業メディアでは数週間経つまで見ることはありません」という。
特に共和党のなかでも最も偏った人物たちが頻繁にゲストとして登場する。米国フロリダ州選出のマット・ゲッツ議員は、未成年者と性的関係を持ったかどうかが焦点となっている連邦政府の性犯罪捜査の中、出演を続けている。
下院少数党院内総務のケビン・マッカーシー(カリフォルニア州選出)が、パンデミックの安全対策をホロコーストと同一視したことを非難した翌日、ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン議員が「War Room」に来て、同情的に耳を傾けた。
また、この番組は番組名に「パンデミック」と記載されていることからもわかるように話題の中心は中国とパンデミックであり、特にパンデミックにおいて中国政府が犯した事を検証している。
パンデミックの話題も大手メディアとは全く異なり、中国・武漢の研究所からCOVID-19が流出したという説を1年以上も前から話題にしている。また、ワクチンに対する懐疑論を奨励し、亜鉛やビタミンDの錠剤を売り込んでいる。
彼らの武漢研究所流説の根拠として番組としてよく出演するのが、香港からアメリカに亡命した閻麗夢や郭文貴などである。
特に郭文貴とは親交が深く、昨年バノンが逮捕された場所は郭文貴が住んでいる船であり、また2020年に郭とともに新中国連邦を共同設立している。
番組の初期にバノンと共同で司会をしていたトランプのアドバイザーであるジェイソン・ミラーは、バノンの人気に対して1990年代に保守運動の発展に貢献した故ラッシュ・リンボーになぞらえてる。
ミラーはトランプに「誰がこの番組に出演していて、誰が何をしているのか、頻繁に彼に報告している」といい、トランプは「バノンとこの番組がやっている仕事を間違いなく評価している」と付け加えた。
War Roomに集まる共和党員
スティーブ・バノンは新しいMAGA拡声器であり、ドナルド・トランプ元大統領の影響化にある野心的な共和党員たちはバノンを非常に意識している。
ブライトバート・ニュースの元幹部で、トランプの「Make America Great Again」運動の立役者の一人であるバノンは、野心的な共和党員たちによって、トランプの有権者、そしてより間接的にはトランプ自身に自分を売り込むためのハブである。そのため、バノンのポッドキャストに多くの共和党員が集まっている。
NBCニュースのインタビューでバノンは、番組に出演する政治家について「共和党のリトマス試験」と呼び、彼らはまず2020年の不正選挙問題に挑戦することを何よりもまず推し進められると述べている。
War Roomでは、ジョー・バイデンが本当の大統領ではないと主張し、また、2020年の大統領不正選挙事件を強く主張している。
実際「War Room」は、熱狂的なトランプ支持者のためのホームグラウンドである。トランプ支持者とは、民主党や一部の共和党員が「大嘘」と呼んでいる不正選挙説を信じている人々のことを指している。
「11月3日はなくならない。2022年の予備選挙で勝利した共和党員で、11月3日の真相を究明するという誓約をしない者は一人もいないだろう」「私たちは、この運動の中で最もポピュリストであり、最も経済的なナショナリストの翼であることを誇りに思っている」とバノンは言う。
エリス・ステファニック議員(ニューヨーク州選出)は今月、トランプ批判者のリズ・チェニー議員(ウィヨ州選出)を下院共和党会議の議長から失脚させるため出演した。
また、性的不正行為の疑惑で辞任し、現在は上院議員に立候補している元ミズーリ州知事のエリック・グレイテンスも頻繁に出演している。
バノンは、ペンシルバニア州とオハイオ州に特に関心を寄せている。この2つの州では、来年の知事選と上院選の予備選挙が、トランプの忠誠心を試す大きなイベントになると考えられているからだ。